目的:2022年4⽉より不妊治療に公的医療保険が使えるようになった⼀⽅、晩婚化、晩産化の影響などで治療が成功しない夫婦も多数存在する。そういった夫婦が里親・特別養子縁組制度の養親・里親として活躍することが社会的に望まれており、厚⽣労働省からも「不妊治療中の⽅等への特別養子縁組制度・里親制度に関する情報提供の⼿引き」が公表されている。しかし、不妊治療施設において制度に関する情報提供がどの程度⾏われているのか、とくに男性不妊治療施設での情報提供の実態は明らかにされていない。本研究では、全国の男性不妊治療施設において、特別養子縁組制度・里親制度に関する情報提供がどの程度⾏われているのかについて、 状を明らかにすることを⽬的とした。

対象と方法:2022年12⽉から2023年2⽉に、全国の男性不妊治療を⾏っている144施設を対象にGoogle Formによるアンケートを実施し、52施設から研究参加への同意と有効な回答を得た(回収率36.1%)。

結果:制度に関する情報提供を⾏っていたのは、全体の25.0%(52施設中13施設)であった。このうち、顕微鏡下精巣内精子採取術(以下、mTESE)実施群では37.0%(27施設中10施設)、mTESE非実施群では12%(25施設中3施設)であり、mTESE実施群の⽅が制度の情報提供を積極的に⾏っていた。情報提供の⼿段は個別相談が中⼼で、mTESE実施群では10施設中9施設で個別相談が⾏われていたが、年間1〜40件、1件あたりにかける時間は5〜120分と⼤きく幅があり、「具体的な道筋が明確に示せない」「⺠間あっせん機関の団体によっての特徴がわからない」といった声が聞かれた。

考察:医療機関を離れても今後の家族形成の選択について相談できる第三者相談窓口の設置や、男性不妊治療施設で配布しやすいパンフレットの作成、児童相談所と特別養子縁組⺠間あっせん機関との連携強化などが、不妊治療施設における制度の情報提供を促進すると考えられた

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