目的:2022年4月に厚生労働省から不妊治療施設での里親・特別養子縁組制度に関する情報提供の手引きが示されたが、現在どのような形で情報提供が実施されているのか、手引きに沿った情報提供が可能であるかは明らかにされていない。そのため、産婦人科不妊治療施設での里親、特別養子縁組制度についての情報提供の在り方を調査し、抽出された課題を解決できるような情報提供の在り方を検討する。
対象と方法:京都府産婦人科医会に登録されている医療機関、または日本産婦人科学会に体外受精・胚移植に関する 登録施設として登録されている京都府下の医療機関、119施設を対象とし、2022年4~6月にwebアンケートを実施した。
結果:有効回答アンケートは49施設(回収率41%)から得られた。そのうち不妊治療を行っている40施設を解析対象とした。京都府内の不妊治療施設で里親・特別養子縁組制度について日常的に情報提供を行っているのは一般不妊治療のみを行う施設では0%(0/32施設)、高度生殖補助医療も行う施設では50%(4/8施設)であった。また、厚生労働省の指針で推奨される項目について「実施する予定である」「おそらく実施する予定である」と前向きな回答をした施設は、いずれの項目も50%以下であった。
考察:一般不妊治療施設では制度の情報提供が先送りにされ、高度生殖補助医療施設でも一部の施設でしか情報提供が行われていない現状が明らかになった。現状では、厚生労働省が推奨する通りの情報提供を各病院が行うことは難しく、新たな工夫が求められる。アンケートの回答からは、一般不妊治療施設で治療開始時点から利用可能なパンフレットの作成や、どの不妊治療施設に通っていても今後の選択肢について情報提供を受けたり気持ちの揺れを話せたりする第三者機関の相談窓口の設置が必要であると考えられた。